「イノリ…。キヨはね、自殺しようとしたのよ。何よりも愛しているあなたを失って…生きていく自信がなくなったのよ。イノリ…キヨの気持ちがわかる?」



「………カンナ。イノリを責めてはダメだ。誰も悪くない」



「だってキヨが…!見つけるのが遅かったら死んでいたかもしれないのよ!?私っ…キヨが死んでしまったらイノリを恨んでたわ!!」




カンナはイノリを睨みつける。





「…なんで?あんなにずっと、ずっと昔からキヨの手を繋いでいたのに、自分のもののように大切にしていたのに…どうしてその手を離したりしたのよ!!」




カンナの嘆きを聞いたイノリは、キヨの手首を掴むと包帯を外した。





「――――っ!!!!」



深く刻まれた傷跡はまだ微かに血が滲んでいる。


その生々しい傷跡を見た4人は息を呑む。





カゼは眉を寄せながらギュッと目を瞑り、カンナは口元を押さえ泣き出した。


ケンは泣き崩れている。





「…こんな深い傷…痛かっただろ。目も…こんなに腫らして…どんだけ泣いたんだよ…。たかが俺1人いなくなっただけじゃねぇか。何でこんな事する程悲しむんだよ…バカじゃねぇの……」




イノリはこれほどまでにキヨに愛されている事を知った。




わかっていた。

この子は自分がいないと歩いて行けないんだと。



わかっていながら離れていった自分が情けなくて、腹立たしくてイノリは涙が込み上げてきた。





「…っ…俺は何を…」




イノリは深い傷が刻まれたキヨの手首を握り締め、自分の額に宛てると嗚咽した。


キヨの血がイノリの額に付く。






イノリを愛するあまり、最悪な選択をしてしまったキヨ。




首筋に刻まれていたイノリに愛されていた印が消えてしまったキヨは


イノリを愛していた印を自らの手首に刻んだのだった。