「…イノリは出て行ったよ。私達止めたんだけど行っちゃった…」


「なんで!?どうして!?私とイノリ、昨日やっと結ばれたんだよ?なのにどうして…どうして何度も裏切るの?…離れていくの?どうしてよぉぉぉ!!」



これから幸せな日々が始まるのだと胸を弾ませていたキヨ。


彼女の夢は1日も経たない内に儚く終わってしまった。





「私…イノリが好き過ぎて…自分に都合の良い夢でも見てたのかな。…昨日のあれは夢だったのかな」



キヨがカンナを見つめると、カンナは首を左右に振った。




「イノリがキヨを本当に愛してるんだってわかるよ。だってほら、ここにその証が付いてるもの」




カンナはキヨの首筋を指で触る。


そこにはキスマークがくっきりと刻まれていた。





「イノリはキヨをちゃんと愛してるわ。どこにいたってそれは変わらない。ただイノリはケジメを付けたかったのよ。…誰にも甘えないで生きていきたいんだと思う」


「イノリがそばにいないなんて嫌だ!なんで相談してくれなかったの?なんで今なの?…イノリがいない生活なんて私は出来ない!!」


「キヨ、永遠の別れじゃないんだよ?大学に行けば会える。講義も一緒なんだから」


「そういう問題じゃないよ!」




カンナは泣きじゃくるキヨの背中を撫でる事しか出来なかった。