カンナは掛けてあげる言葉が見つからなかった。


カンナが困り果てていると部室にケンがやってきた。




「よっ!ケン様の参上だよ♪……ってキヨ!?どうした?」



床にへたり込みながら嗚咽するキヨに気付いたケンは、キヨとカンナに駆け寄る。




「カンナ、何があったの!?」

「…イノリの真実を話しちゃったの」

「イノリの真実?…あぁ、俺も昨日聞いたよ。本人から」




ケンは複雑な面持ちでしゃがみ込むと、キヨの頭を撫でた。





「キヨ、辛いかもしれないけど真実なんだ。過去の事を悲しんでも仕方がない。…大丈夫、今のイノリはキヨが好きなんだから」


「……私はイノリなんか好きじゃないっ…!」




キヨは顔を上げるとケンを睨む。


ケンは苦笑いしながら自分の胸にキヨを抱き寄せた。





カンナはケンを気遣って部室から出て行った。

…いや、気遣ったのではないのかもしれない。



自分ではどうする事も出来ないから、ケンに託しただけだったのかもしれない。



カンナは部室から出るとイノリに電話を掛けた。





2人になった部室でケンはキヨが落ち着くまで、そのまま抱きしめていた。




「…ケン…。私…これからどうしたらいい?……イノリの事諦めるべき?でも今諦めたらきっと…イノリもお姉ちゃんも恨む事になる…」


「好きなだけ好きでいればいい。もしそれで諦められたら…俺を好きになればいいよ。俺はキヨだけを大切にする」


「…ありがとう。私も最初からケンを好きになっていればよかったなぁ」


「そんな可愛い事言うな。今すぐ俺のものにしたくなるだろ」



ケンはキヨを体から離すと、ニカッと笑った。




「ドライブでも行くかぁ?キヨの行きたい所に連れてってあげるよ」



ケンが立ち上がりポケットから車のキイを取り出すと、キヨはケンの背中に抱きついた。