祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】

キヨはあまり見る事のないカゼの涙に動揺しながら、ポケットを探りハンカチを探す。




「………でも、もし今兄貴が死んでも…俺は悲しくない。罪悪感は感じるだろうけど、きっと喜んでしまう」


「じゃあなんでそんなに悲しそうなの?…カゼはそんな冷酷な人じゃない。私は知ってるよ」


「………キヨ。俺はどうしたらいい?……もし本当に兄貴が…死んだら……」



カゼは空から目を離すと、小さなキヨの体を強く抱きしめた。





「カゼ。今あなたがするべき事は病院に行く事だよ。お兄さんもそれを望んでる」



キヨは震えるカゼの背中をゆっくりと何度もさすると、空を見上げた。




暫く星空の下で抱き合ったまま立ち尽くしていた2人。


カゼはキヨから体を離し、服の裾で目を拭った。




「………ごめん。こんな事したらイノリに殺される」


「イノリは大丈夫。今はカゼの方が大切だから」


「………キヨ。俺、美咲さんとはもう会わない。それが兄貴へのせめてもの罪滅ぼし」


「美咲さんってお兄さんの奥さん?…そうだね、その方がカゼの為でもあるよ」




キヨはカゼに微笑むと、2人は手を繋いで病院へと向かった。