祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】

「………俺はあの時、子どもらしからぬ願いをした」

「子どもらしからぬ?」

「………そう。あの時俺は『兄貴が死ぬように』と願った」




カゼの言葉にキヨは震え出す。

子どもながらに願った彼の想い。



キヨは彼が恐いとか狂っているとかではなく、幼稚園児の彼がそこまでの憎悪を感じていた気持ちが痛くて苦しかった。




「………人としておかしいだろ。みんなが綺麗な願いを掛けてる時に、俺は汚い事を願った。それにもし、そんな事を願って叶ってしまったら…きっと俺は…」


「もういい!もういいよカゼ…もうやめて……何も言わないでっ」




キヨは耳を塞ぎながら思い切り首を横に振った。





「………ごめん、キヨ。こんな話して。…ごめんな」




暫くその場に立ち止まったまま2人は空を見上げていた。


願いが叶わないようにと願いながら……





キヨはその後の事を覚えていない。


カゼと土手に向かい、みんなで花火をしてハシャいだ事も覚えていなかった。




カゼの願いが痛くて意外過ぎて、その事ばかり考えていた。




キヨの意識が戻った時、気付くと自分の部屋にいた。


いつ、どうやって戻ってきたのか疑問に想い、顔をあげると目の前にイノリの顔があった。




「うぎあああああああ!!!!」

「美月!うるさいわよ!!何時だと思ってるの!!」




母の怒鳴り声が聞こえ、キヨはハッと口を押さえた。





「耳痛ぇ……何だよ、今の声は!ったく」


「なななっ…何でイノリがいるのよ!」


「花火ん時、お前1人で浮かない顔してたから心配してやってたんだろ!今だって目ぇ見開いたまま瞬きもしないで座ってっから」




イノリは強い口調で話しているが、キヨを撫でる手は優しかった。



その優しさが痛いキヨはあぐらを掻いて座っているイノリに抱きついた。


いきなり抱きつかれたイノリはバランスを崩しながらも、優しく微笑んでキヨの背中を撫でた。