「お前に祈りなんて必要ねぇよ。俺が叶えてやる」



イノリはキヨの頭をガシガシと撫でると歩き始めた。

キヨは不満そうに再び星を見つめる。




その時

鳥が飛び立ち風が吹いた。

辺りに咲く花がその風に舞う。



そしてその光景を月が照らす。





「…美月!置いていくぞ」



キヨは叫ぶイノリを見つめた。




「イノリ…今なんて…」

「お前はもう清田じゃねぇんだからキヨじゃねぇだろ。…嫌か?」

「違っ…私ね、さっき星に…」



イノリはキヨの言葉を指で塞ぐ。

キヨの瞳からは涙が溢れていた。




「お前の事なら何でもわかる。言っただろ?お前の願いは俺の願いなんだって。……さぁ帰ろう。美月」





沢山傷ついて沢山傷つけて
間違った道ばかり選んできた。



大切な物を見失いながら何度もすれ違い、逃げては求め合ってきた2人。



罪と罰
真実と嘘
信頼と裏切り
生と死



幼なじみの5人の間に訪れた出来事を、何1つとして忘れたくないと思えた時…


2人の上を星が流れて消えた。





キヨは“イノリが名前で呼んでくれますように”と、星に願っていた。








美月の願いを何度も叶え続けてくれたのは星ではない。



祈だった事に

今、やっと気付いた…。





















【祈りのいらない世界で・END】