「…なぁ。なんで泣いてんだよ、キヨは」


「だって…お姉ちゃんをあんなに苦しめてたのかと思うと辛くて。お姉ちゃんがあんなに泣くとこ初めて見た…」


「お前はどこまでお人好しなんだよ。普通なら恨むものだと思うけどな。…まぁそれがお前のいい所か」



イノリはフッと微笑むと、ぽろぽろと涙を流すキヨの額にキスをした。




「泣くな。今日は泣く日じゃねぇだろ。この泣き虫」


額にキスをされキヨが泣き止むとイノリはキヨの手を繋いで歩き出す。



2人はカゼ、カンナ、ケンの親にも報告に行くとそのままカゼのお墓に向かった。






今日の空は快晴。

風が雲さえ吹き払い、突き抜ける程の青をくれる。



長い時間を共に笑い、共に泣き、共に支え合ってきたキヨとイノリ。


そしてこれからも昔と変わらずに生きていく2人を、世界が祝福してくれているように思えた。




同い年の幼なじみに生まれてくる確率なんて極めて低い。




隠れんぼをした山も
花火をした河原も
星を眺めた土手も
泥だらけになって駆け回った田んぼも
並んで歩いた散歩道も
自転車を漕いだ通学路も



ここに戻ってくれば必ずある風景。





奇跡のような運命の中、巡り会えた5人の幼なじみが過ごしてきた世界は、これからも何も変わらない。