でも…


他の人の優しさに甘えて、他の人を好きになろうと間違った事をして泣いてばかりいたけど


イノリの元に戻ってこれて本当によかった。




ケンが愛してくれたから

カンナがそばにいてくれたから

カゼが手を差し伸べてくれていたから



私は今こうしてまたイノリといられるの。






東京になんか来なきゃよかった。

幼なじみになんか生まれてこなければよかったと思ったけど



幼なじみに生まれてこなかったら

こんなに沢山の幸せを感じる事は出来なかったし




みんなが何の繋がりもない他人だったらきっと

私の毎日は誇れる物もない、つまらなく寂しい世界だった。




東京に来なかったら、どれだけイノリを愛してるか気付かなかったはず。



そう思うから
何も後悔してないよ。





私1人じゃダメだった。

みんながいてくれたから幸せになれたんだよ。




イノリ、カンナ、ケン、カゼ。

あなた達はこの世の何ものにも代え難い大切な家族だよ。




キヨが昔から変わらず愛する人の隣りでそんな事を想っているとイノリが呟いた。



「これからは自分の為だけじゃなく2人の為に働かなきゃな。それにいつかガキまで増えやがる」


「荷が重い?」


「いや…重荷や負担だなんて思わないよ。
キヨ、お前はずっと俺の生き甲斐だ」




うん、そうね。

これから始まる2人の生活に不安なんて感じない。



朝、一番にあなたに“いってらっしゃい”と言って、夜に一番に“おかえりなさい”と言う。


そんな生活になるだけ。



そしてその生活が
私の生き甲斐になる。





「私、ずっと憧れてたの。イノリとの夫婦生活に…」

「あぁ、俺もだ」



イノリとキヨは20年以上変わらず2人を見守り続けてくれた星達の下、新たな道を歩き出した。



星達と優しいカゼに見守られながら…。