祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】

「やっ…やだ!恥ずかしいよっ!!降ろして!!」


「………俺は恥ずかしくないよ」


「だってみんな見てるよ!子供扱いしないで!!…そうだ、カンナ抱っこしてあげなよ」


「………カンナは背が高いから俺が抱っこしても、あんまり浮かないよ?」



カゼはカンナの元まで歩くと、キヨを降ろしカンナを抱き上げた。




「………あ。抱っこ出来た」

「ちょっと…!やだ!!何してんのよ、カゼは!!」



赤くなったカンナの叫ぶ声を聞くと、キヨは2人の邪魔にならないようにと1人、キャンパスを後にした。




「あのまま付き合っちゃえばいいのに。そしたら勢いで私とイノリも……なんてね」



キヨがニヤニヤしながら歩いていると、見慣れた背中が前を歩いているのが見えた。




「イノリ、今からバイト?」



前を歩いていたのはイノリ。




「何だ、キヨか」

「何だとは失礼ね。カゼとカンナがラブラブしてるから先に帰って来ちゃったんだよ」

「ふ〜ん。お前1人で帰れるのか?」

「当たり前でしょ!もう東京来て何ヶ月経つと思ってるのよ」



キヨは顔を膨らましながらイノリの横を歩く。





「お前はよく迷子になるからな。…バイト終わるの待ってれば一緒に帰ってやるぞ」


「でもイノリのバイト先ってジーンズショップでしょ?どこで待ってればいいの?」


「店ん中ウロついてればいいだろ。それが嫌なら隣りのカフェにでもいろ。とにかく1人では帰るな。危ねぇだろ」



言い方は素っ気ないが不器用なイノリなりの優しさを感じたキヨは、イノリと共にイノリのバイト先へと向かった。