祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】

「なんで私ってさ、キヨって呼ばれてるんだっけ?みんな名前なのに私だけ苗字だよ。美月って名前、綺麗で気に入ってるのに」



「…確か俺が『名前負けしてる』って言ったからじゃなかったか?お前はチビでヒヨコみたいだからキヨでいいよって流れだった気がしたけど」



イノリはただ、自分以外の男がキヨを名前で呼ぶ事が嫌だった。




「そうだ!思い出した。イノリが名付け親だったね」



キヨが分が悪そうにイノリを睨むとイノリはキヨの肩を掴み、抱き寄せた。




「…イノリ?」

「眠い。寝ようぜ」

「もう!イノリはムードがないな」

「俺とお前の間にはムードもクソもねぇだろ!!」



イノリは欠伸をすると、自分が寝ていた布団へと戻った。



イノリがキヨを見るとキヨは1人窓に立ち、海を儚く照らす大きな月を眺めていた。


月に照らされたキヨの後ろ姿が綺麗だと思った。




「……ミツキ…」

「ん?何か言った?」



キヨが振り向くとイノリは首を横に振った。




「…ほら、来いよ。早く寝ねぇと朝起きれねぇぞ」

「一緒に寝てくれる?」

「はいはい、わかったから早く来い」



イノリは毛布を捲りパンパンと布団を叩いてキヨを呼ぶが、キヨは立ち竦んだまま動かない。