祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】

「やっぱりカゼとキヨだった♪何してんの?俺はバンドの練習の帰りだよん」

「………受験者がバンド…。俺は予備校の帰り。そしたらキヨに会った」

「…予備校かぁ。頑張ってるね、みんな」



カゼの話を聞いたケンは寂しそうに空を見上げた。




太陽が出ている時間が短い冬は、すぐに辺りが暗くなる。

3人がいる場所も段々と薄暗くなり始めた。





「ケンは進路決まった?」

「ん〜ん。探してさえいないよ。このままじゃニートだね、あははは」



キヨの問いにケンは笑いながら答えた。

でもどこか寂しそうな表情をしている。




「キヨは決めたの?大学行きたいって言ってたけど、やっぱ地元の大学?」



ケンの問いを聞いたキヨはカゼを見つめる。

カゼは優しく頷いた。




「私ね、カゼと同じ大学受けるの。だから…東京に行くよ」

「え?東京!?ここからじゃ新幹線使わなきゃ通えないよ。……ってまさか!上京しちゃうって事!?」



2人が頷くとケンの瞳は段々と潤んできた。




「なっ…何だよ、それ。何で…いなくなっちゃうんだよ。地元にいれば、例え別々の進路を選んでも会えるから大丈夫だって思ってたのに…」

「ケン…」

「やっぱり…いつまでも5人一緒になんて無理な話だよね。みんな目指す物が違うんだもん。当たり前の事だよな…」



キヨは自分と同じ想いをしていたケンに抱きついた。





高校までの時間は、これから先の夢を探す為の時間だった。

だから悩むのも迷うのも5人一緒だったんだ。



でもこれからは、その長い時間をかけて探してきた夢に向かって、歩き出さなきゃいけない時。



まだまだ子供なのに、自分の意思で決断していかなければならない未熟な大人予備軍。




そんな未知な世界でも、5人一緒なら乗り越えられると思ってた。



でも私達が今歩いているのは5本の分かれ道。


今の私達はどの道を歩くのか分岐点で悩んでいるところ。