祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】

イノリは一瞬悲しそうな表情を浮かべると、そのまま2人とは違う方向に歩いていった。



「カゼ、私イノリ捜してくるね」

「………うん、わかった。見つからなかったら電話して」

「うん。そうする」



キヨはカゼから離れると、再びイノリを捜しに走った。



体育館裏や倉庫、グラウンドまで捜したがやはりイノリはいない。

途方に暮れたキヨは屋上へと向かった。




「…イノリ、どこにもいないや。もしかしたらギャル達と楽しんでるのかも」



キヨはフェンスの手すりを握ると空を見上げた。

文化祭の賑わう声が聞こえる。




「っ…。意地なんて張らなければよかった。何を言われてもイノリといたいんだって言えばよかったよ…。最後の文化祭なのに」



キヨはそう呟くと、フェンスに寄りかかりながら座り込む。




この意地っ張りで可愛くない性格。

いい加減イノリも愛想尽かしただろうな…。



…どうしよう。


イノリには嫌われたくないよ。
イノリを失いたくない。



「…イノリを…誰かに取られるなんて嫌っ!!そんなの嫌だ」




私のものにならなくてもいい。
隣りにいてくれるだけでいい。



もう、ちっぽけな欲望くらい我慢出来る。




でも
お願いだから


誰かのものにもならないで…








今イノリが

私以外の誰かのものになって
隣りからいなくなったら……




私は
私の十数年分のこの想いは

存在は



何処へ…消えていくんだろう。







屋上に吹く風が心地良くて、キヨはいつの間にか眠ってしまった。