祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】

すると、キヨに絡んできた男が思いっきりカゼに突っ込んだ。

カゼはその場にうずくまる。



突っ込んだ男は悪びれる様子もなく、カゼを見下ろすと口角を上げた。



少し痛いくらいでは表情を変えないカゼだが、今は痛そうに足を触りながら顔をしかめていた。



「あんのクソ野郎!わざとやりやがったな!!ぶっ殺してやる!!」

「イノリっ落ち着けって!!」



拳を握りコートに入ろうとするイノリを止めるケンの横で、痛がるカゼの姿を見て涙を流すカンナの背中を撫でるキヨ。



コートの外に運ばれたカゼは、顧問の先生に処置を受けていた。

すると顧問の先生はキヨを呼ぶ。



キヨはケンにカンナを任せると、カゼの元へ向かった。



担架に寝そべるカゼはキヨの顔を見ると微笑み、手を差し出す。

キヨはその手を握りしめた。




「カゼっ!大丈夫!?」

「………うん。キヨ見たからもう大丈夫。だから泣かないで」



カンナの涙に気を取られ、自分も泣いていた事に今気付いた。




「………大丈夫。負けないから。カンナにも泣かないでって言ってあげて」

「倉木、大丈夫なのか?」

「………はい。大丈夫ですよ。コートに戻ります」




カゼは先生に軽く頭を下げると、足を引き吊りながら再びコートに戻っていった。