祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】

「…カンナとケン、イノリに会いたくなっちゃった」


そう言って再び涙を流すキヨの額に、カゼはキスを落とした。



イノリがしてくれる時と違って、キヨの涙は止まらない。


逆に余計にイノリが恋しくて、涙が溢れてきた。




「………俺じゃダメみたいだね」

「違っ…!!ただイノリに会いたくなっちゃったのっ」

「………ふっ。キヨは本当にイノリが好きだな」



カゼはキヨの頭を撫でる。




「………帰ろうか。明日も朝早いし」

「私、もう少しここにいる。カゼ先に帰ってていいよ」

「………わかった。じゃあ部屋に帰ったら電話して。イノリの代わりにはならないけど、そばにいさせてよ」

「うん、ありがとう」



カゼは砂を払うとキヨの撫で、合宿所へと帰って行った。


キヨは1人、夜の海を眺めていた。




イノリに会いたい…
イノリの顔が見たい…
イノリに『泣くな』って頭を撫でて欲しい…


どうしてこんなにもイノリという存在が必要なんだろう…



たかが1日会えないだけでどうしてこんなに寂しいんだろう。




「…イノリっ…」



キヨが膝に顔を埋めると、サクサクと砂浜を誰かが歩いてくる音がした。




「あっれ〜?昼間の女の子じゃん。1人で何してんの?」



キヨが振り向くと、調理場で会った他校の男子達が立っていた。




「何でもないです。ほっといて下さい」

「バカじゃねぇの?女が1人でこんな所にいて、ほっといて貰えるとでも思ってんのか?」



男子達はそう言うと、キヨの腕を掴み引っ張り合う。