祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】

「カ…カゼっ!!恥ずかしいよ!!大丈夫だから離して…」

「………キヨにケガさせたらイノリに殺される」



カゼはキヨの手を離すと、調理場から走り去り救急箱を持ってきた。


キヨはカゼに絆創膏を貼って貰うと、再びカレーを作り始めた。




カゼはその横で鼻歌を歌いながらカレーを作るキヨを見つめていた。




練習を終えた部員にカレーらしきものを振る舞ったキヨは、部員の練習着やソックスを洗濯し干すと、用意されている自室へと戻った。



テレビも何もない誰もいない部屋。


静かに刻まれる時間はキヨを孤独な世界へと引き込んでいく。



いたたまれなくなったキヨが携帯を手に取ると、タイミングよく電話が掛かってきた。



「…はい」

「俺だ。泣いてねぇか?泣き虫さんは」

「…っ!!イノリっ」



着信はイノリからだった。


イノリの低い声を聞いたキヨは泣くつもりなんかなかったのに、何故か涙が込み上げてきた。




「…ふっ…うぁぁぁん!なんでよ〜…なんでイノリいないの?バカぁ…」

「おい、バカってなんだよ。お前が勝手に行ったんだろ」

「そうだけどさぁ〜…イノリいないのは嫌だよぉぉ…。寂しいよっ」



泣きじゃくるキヨにイノリが溜め息をついた時、キヨの部屋のドアがノックされた。



「ひゃっ!?誰か来たっ!!」

「は?…変な野郎だったら危ねぇからドアの前で誰か聞け」



キヨはイノリの言葉に頷くとドアの前に立ち、呟いた。




「…誰ですか?」

「………カゼ。開けてキヨ」

「カゼ?」



キヨがドアを開けると、ドアの前にはカゼが立っていた。


廊下からは他の高校の部員らが騒いでいる声が聞こえる。