祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】

ある夏の日、キヨはイノリを探していた。


家や公園、田んぼなどを探すが何処にもいない。



イノリがいないというだけで、キヨは不安と孤独感にかられていた。



泣きそうになりながら歩いていると、河原の草むらから見慣れた黒い癖っ毛の頭が覗いていた。




「――っ!!イノ…リ…」



キヨが駆け寄ろうとすると、携帯用ゲームをしているイノリの横には見知らぬ女の子が座っていた。



「へ?…あの子誰?」



まだ小学生のキヨだったが、この時嫉妬にも似た感情を感じた。

お気に入りの玩具を取られたような気持ち。



でもそんなちっぽけな気持ちとは違った。




キヨが眉を寄せながら2人を見ていると、女の子がイノリの頬にキスをし、そのまま走り去っていった。


当のイノリは何もなかったかのように、ゲームをし続けている。



そんなイノリに歩み寄ると、キヨはイノリのゲーム機を奪い取った。




「!!!!…キヨ?何だよ、いきなり。びっくりするじゃねぇか」

「イノリの女好き!バカ!!アホ!!寝癖っ!!」

「はぁ!?」



涙目で叫ぶキヨを見たイノリは溜め息を吐く。




「…妬いてんのか?さっきの子は今日ここで初めて会った名前も知らねぇ奴だ。もう会う事ねぇよ」

「でもチューしてたもん!!」

「勝手にされたんだよ!!いちいちうるせぇな!!」



イノリの言葉に怒ったキヨは、イノリのゲーム機を川に投げた。



ボチャン…と重い物が沈む音が河原に響く。