祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】

「人間が持っとるもんは、いつか必ず朽ちる。体も命も感情も。
…しかしお前さん達の絆は朽ちらせてはならんぞ?ジジイが荒んでいく時代の中で、やっと見つけた絆だ。何があってもいくつ歳をとっても、ずっと5人でいてくれ。ジジイとの約束だ」



じいちゃんの言葉に頷くと、5人はじいちゃんに向けて小指を出した。



「指切りげんまん」



じいちゃんの皺々の小指に小さい小指を5つ絡め、指切りげんまんをした。




「お前さん達とは小学2年生の頃からの付き合いじゃが、本当に大きくなったのぅ…。孫の成長を見ているようだの」



じいちゃんは5人を優しく見つめる。




「かんなは花のように綺麗なおなごになり、健斗は鳥のように悲しんでる人の所へ飛んでいく優しい男になる。

風は風のように気ままじゃけど、他人に左右されないその生き方は素晴らしい。男前だしの。

美月は月のように小さな幸せを沢山人に注ぐ子になる。

そして祈は、美月達が幸せになるよう祈ってやれる逞しい男になるじゃろう」




じいちゃんが1人1人に紡ぐ言葉は、優しくて悲しかった。

遺言のようだったから。




「かんな、健斗、風、美月、祈。ジジイはお前さん達が大好きじゃよ。…またいつか会おう」



麦藁じいちゃんはそう言うと、自転車を漕いで去っていった。


線香の匂いがしていたじいちゃんからは病院の匂いがした。