祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】

「大きくなったらわかる。ジジイの言葉がな」



木陰に吹き渡る生ぬるい風を感じながら、5人と麦藁じいちゃんは笑い合っていた。



「じいちゃんも、きずなを持ってるの?」

「あぁ。ジジイには婆さんと言う奥さんがおってな。婆さんとは確かに絆で結ばれておった。…もう随分前に死んでしもうたがな」



『死』という言葉を聞いた5人は涙ぐむ。




「なんじゃ、お前さん達が泣く事ではなかろう」

「だって…じいちゃん1人になっちゃったんでしょ?寂しくないの?」



キヨが涙を拭きながら麦藁じいちゃんに問うと、じいちゃんは優しくキヨの頭を撫でながら呟いた。




「そうだのぅ、ワシは寂しいからお前さん達に会いに来るのかもしれんな。…だから今は寂しくないぞ」

「本当に?」

「ジジイは嘘はつかん。美月は優しいな」



じいちゃんの笑顔を見た5人は、じいちゃんに抱きついた。

じいちゃんは線香の匂いがした。




それからも毎年、夏休みには麦藁じいちゃんと色んな話をしていた5人。



じいちゃんの子どもの頃の話。
地元の昔の話。
婆さんの話。
じいちゃんから見た現代の話。



子ども過ぎた5人には難しい話もあったが、じいちゃんの話を聞くのは楽しかった。





しかし、小学6年生の夏休み。

麦藁じいちゃんが現れる事はなかった。