祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】

「どうしたの?どっか痛い?」

「………うん。心が痛い」



キヨはカゼの言いたい事がわからず、ただカゼの髪を撫でるだけしか出来なかった。



カゼの髪は柔らかくてさらさらしている。

その黒い髪に桜の花びらが乗っていた。




「………キヨを守れなかった。だから心が痛い。イノリならキヨの事、ちゃんと守れるんだろうな」


「あれは私が勝手にした事だから気にしないで。…迷子になった私を見つけてくれただけで、凄く嬉しいよ」


「………昔、約束したからね。キヨがいなくなったら今度は俺が探すって」


「そうだったね。ありがとう、カゼ」




体を離し、2人が顔を見合わせると強い風に吹かれた沢山の桜の花びらが2人の間を通り過ぎた。




「わっ!びっくりしたぁ。…でも綺麗」

「………キヨ、桜まみれ」

「ふふっ。カゼもだよ?」



カゼとキヨはお互いについている花びらを払い合った。





「私ね、迷子の男の子のお母さん探してたら自分が迷子になっちゃったんだ」

「………キヨはよく迷子になる」

「小さい頃より大人になった今迷子になる方が心細かった。…小さい頃は泣いていれば誰かが手を差し伸べてくれるけど、今はそうもいかないからね」




キヨが体育座りをしている膝に顔を埋めると、カゼがキヨに手を差し伸べた。