祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】

ふとイノリは立ち止まると、キヨを見つめた。



キヨが首を傾げながらイノリを見ると、イノリはキヨに顔を近付ける。


キスをされると思ったキヨは、桜と同じくらい頬をピンクに染めた。




反射的にキヨが目を瞑ると、おでこに何かが触れた。



「…デコに花びら付いてるぞ」

「えっ!?花びら…?」



イノリが花びらをキヨに見せると、キヨは真っ赤になってイノリから顔を反らした。




風に舞う桜の花びら。


ピンク色の風に髪を靡かせながら2人はカゼ達の元へ戻った。





「おかえり〜…って何そのお面!キヨのは可愛いけどイノリのキモいよ」

「ケンに似てたから買ってきたんだよ。…ほら、お前が付けろ」



イノリは無理矢理ケンにお面を付けると、キヨのおにぎりを食べ始めた。




「あれ?不味いって言ってたのに」

「腹が減ってれば何でも食えんだよ。…腹に入ればみんな同じだしな」



文句を言いながらもおにぎりを食べてくれたイノリを見てキヨは微笑んでいた。



食べたり飲んだりしながら騒いでいた5人は、桜道の下にある土手に広がる菜の花畑に向かった。




空の青、桜のピンク、菜の花の黄色が広がる世界。


花の香りが広がるその場所は春を感じさせてくれる。





5人が菜の花畑で追いかけっこをしていると、キヨは迷子らしい泣いている子どもと遭遇した。