「…私も風に話してあげればよかった。あんなに一緒にいたのに…あんなに優しくしてくれたのに!私は風に…何もしてあげられなかった」



そう言って泣き出した美咲に、イノリは優しく呟いた。



「忘れないでくれ。あんたもカゼという人間がいた事を。…あいつは単純だからな、きっとそれだけでも満足すっから」



イノリがニカッと笑うと美咲は涙を拭いながら、何度も頭を下げた。




「キヨももう泣くな。カゼはお前の笑った顔を見たがってる。…それに他の男の為にそんなに泣くと、俺が妬くだろ」

「何それ」



キヨはイノリの服の裾で涙を拭くと、柔らかく微笑んだ。





カゼがいなくなってからキヨは、恐い程の幸せを感じている。


もしかしたらそれはカゼが与えてくれている幸せなのかもしれない。




正義感の強い、優しい人だったから。


いつも心配してくれて
いつも慰めてくれて
いつも守ってくれたカゼ。


そして誰よりも、私とイノリの事を考えてくれていた。


私がイノリと結ばれる事を自分のことのように願っていてくれたよね。




ありがとう…カゼ。
もう大丈夫だよ。



あなたはただこれからも
私達を見守っていてね?







風はいつも何処かで吹いている。


風は気ままだから同じ場所に毎日吹かないけど

髪や肌が風を感じる。



目には見えなくても
カゼはそばにいる。




この世は目に見える物が全てじゃない。

だから5人はいつまでも一緒だよ。







ずっとずっと、これからも…