「そうだな。きっとキヨもカンナと同じ気持ちだよ。キヨも今更お前らと離れたり出来ないはずだ」


「イノリはキヨの事なら何でもわかるのね」


「…当たり前だろ」



カンナは赤くなって珈琲を飲み干すイノリを見て微笑んでいた。




「それより、子どもの名前は決めたのか?ケンがずっと悩んでたけど」


「ケンはダメよ。パンクがどーの、ロックがどーのって言いながら変な名前ばかり考えるんだもの。“ジェシー”とか“シド”とか。私達は日本人だってばって感じよね」



呆れるカンナ。

イノリもケンのセンスを疑った。





「…カゼの子どもだ。似た名前がいいんじゃねぇの?」

「私もそう思って考えたのよ」

「何?」



カンナはカゼの写真を見つめて呟いた。

大切な遺産の名前。




「風って書いて“フウ”。男の子でも女の子でも、その名前を付けるわ」

「あぁ。いい名前だ」




イノリとカンナは、写真の向こうに映るカゼを見つめながら微笑んだ。