地元から帰ってきた4人。

リビングにはカゼの写真と、合鍵がついたままのカゼの携帯が置かれていた。




「ねぇ、イノリもまたここに戻ってくれば?」

「そうだな。キヨを1人に出来ねぇしな」



カンナはイノリに珈琲の入ったカップを渡す。



大切にしてきた繋がりが戻り、昔と同じ空気が流れる。



ケンとキヨは、カンナの為にマタニティ用品を買いに出掛けていた。



「お前とケンは結婚したら、ここから出て行くのか?キヨが心配してたぞ」

「ん?出て行かないわよ。ずっとここにいるわ」

「だよな。金もねぇのに新居に住めるわけがねぇか」

「そうね、ケンのバンドもまだインディーズだから貧乏家庭になるわ」



カンナとイノリは笑う。


心なしか、写真に写る無表情なカゼも微笑んでくれているように見える。




「…キヨが俺んとこに来るべきかな。あいつも新婚の邪魔をする気にならねぇだろうし」



イノリは煙草の箱を手に取ると、カンナを見てハッと箱をテーブルに置いた。