「キヨとイノリ。カンナのお腹には、カゼとの子供がいるんだよ」

「え!?」



驚いたキヨとイノリはカンナを見つめる。


カンナは優しく微笑んでいた。




「だからね、俺がカゼの代わりにお父さんになろうと思う。卒業したらカンナと結婚するよ」



ケンの言葉を聞いたキヨとイノリは涙を流し、キヨはカンナに抱きついた。




「…っうわぁぁぁん!カンナっ…カンナよかったね!!カゼが…ちゃんとカンナの為に残してくれたんだねっ…カンナが1人にならないように…」


「うん。最後まで…正義感の強い優しい人だったよ」



キヨとカンナは震える体を抱きしめ合いながら泣いた。


そんな2人を見つめながら、イノリとケンも泣いていた。




大切な親友が残したもの。

それは残された者たちに与えた希望だった。





「…カンナ。カゼは風になったんだと思うよ」

「風?」



窓が開いてるキヨの部屋には微風が吹き込み、カーテンを揺らす。




「風は見えないけど…感じる事が出来る。だからカゼはいつも私達のそばにいてくれてるよ」

「…っ!そうね。ありがとう…キヨ」




その時だった。


風に乗って嗅ぎなれたカゼの匂いがした。

カゼの家の匂いなのかもしれない。



しかし4人はカゼがここにいるのだと確信した。
















“………うん。

いつもそばにいるよ”