祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】

不倫を否定するつもりはない。

不倫だってひとつの恋愛だから。



…でも不倫は、誰も幸せになんかなれない。




そう分かっていながら、キヨはカゼに何も言えなかった。




「ねぇカゼ、どっか寄って帰ろうか。今からだと行く所限られちゃうけど」

「………キヨは昔からそうだな」

「え?何が?」

「………覚えてるか?まだ幼稚園くらいの時、俺が兄貴と喧嘩して家から飛び出した事あったろ」




カゼは昔の思い出を話し始めた。




それはまだ5人が小学校に入学する前の事。


カゼは5歳年上の兄と喧嘩をした。

何が理由で喧嘩をしたかは定かではない。



しかし、小さい頃から無口で温厚だったカゼが怒りを露わにした程だった。




夜になっても帰って来ないカゼを心配して、5人とその両親が家の周りを探したが見つからなかった。



「カゼ〜!!」



みんなが探すのをやめ、家で帰りを待つ事にした中、キヨは1人カゼを探し続けていた。




田舎であるキヨ達の地元は街灯が少なく暗い。


ただ、夜空に引き詰まる星と大きな月が暗闇を儚く照らしてくれている。




暗闇が恐くて震えながらキヨは月明かりを頼りに、カゼを探し回った。