祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】

叶わないと想いながらもその恋心に溺れていたキヨとイノリ。



そんな2人がやっと素直に向き合い、抱きしめ合っている時、ケンはカンナの妊娠を知った。




「カンナ、よかったね。カゼとの子どもが出来て」

「うん。この子のおかげで…ううん、この子を与えてくれたカゼのおかげで私は生きていけるわ」



まだ確定はしていない妊娠。


しかしカンナは、自分の中に宿った命を確かに感じていた。




「…でもどうするの?どうやって育てるの?カンナだってまだ就職が決まっただけだし、妊婦の体で働くのは無理だよ」


「大丈夫よ。何とかなる。何があっても私は必ずこの子を産むの。カゼと私の愛が確かに存在した証だから」



カンナは真っ赤に腫れた目を細めながら、愛しそうに微笑んだ。





「……じゃあさ、俺がその子の父親になるよ。俺がカンナとカゼの子を守る。カゼの為にもね」


「…!!何言ってるの?だってケンはキヨがいるじゃない。…それに私はカゼを死ぬまで愛し続けるわよ」



ケンのまさかの発言にカンナは目を丸くした。





「キヨにはイノリがいる。…俺は知ってるんだ。キヨが今でもイノリを想ってること。ずっと知ってたよ」


「ケン…」


「俺がカンナと結ばれたら、キヨも心置きなくイノリの元へ行けるだろ?……それに、俺の中でカンナだってキヨと同じくらい大切な女の子だよ」



ケンがそう言って微笑むと、カンナはケンに抱きついた。

そんなカンナをケンは抱きしめ返した。




「カンナは何があってもカゼだけを好きでいて?…俺は代わりでいいから、ただカゼが残した命を一緒に育てさせてくれ」


「…ありがとう、ケン」




キヨの事が好きだ。
きっと諦められる日は来ない。

けれど亡き親友が遺した命を守ってやりたいと強く思う。



それがカゼへの餞だとケンは思った。