嗚咽が治まってきたカンナは顔をあげると、内から何かが込み上げてくるのを感じた。



「…うっ…!」

「かんなちゃん!?」



カンナは口元を押さえると、込み上げてきたものを吐き出した。




「美咲ちゃん!!ちょっとタオル持ってきてくれる?」



カンナの背中をさするカゼの母に促された美咲は、急いでタオルを取りに向かった。


カンナは青ざめながら苦しそうに息をしている。




「…もしかして…かんなちゃん、あなた生理来てる?」

「…いえ、2ヵ月ほど来てません。色々忙しかったからストレスで遅れているんだと………え?…まさか…」



カンナは下腹を触る。


カンナがカゼの母を見ると、泣きながら微笑んでいた。



「かんなちゃん。あなたは妊娠しているのよ。あなたはカゼの…」



カンナはカゼが最後にくれた贈り物の存在に気付いた。


カゼがくれた奇跡。
愛の証。



カンナは顔をくしゃくしゃにしながら声をあげて泣いた。




「うぁぁぁぁぁっ!!!!カゼっ…カゼ―――!!!!」



昔から落ち着いてて、凛としているカンナを知っているカゼの母。


そんなカンナが自分の息子をこんなにも想ってくれている事、そして自分の孫を身ごもっている事を知った母は、強くカンナを抱きしめた。






カゼが残した奇跡。


それは紛れもなく、絶望にいるカンナを救った一筋の光だった。