「…私…やっと実感した。カゼはもう…いないんだって…」



キヨは煙を見つめながら涙を浮かべる。




「キヨ…」

「カゼがひょっとしたら、まだどこかにいるんじゃないかって…死んだって言うのは…誰かの嘘かもしれないって思ってね、地元に帰ってきたらすぐに土手や公園、河原…学校や田んぼ見てきたの」



キヨは震える。

キヨの言葉を聞いている3人も涙を流していた。




「…でもね…もうどこにもっ…カゼはいなかったの…」




カゼはもう

この世のどこを捜してもいない…



もう何処にもカゼはいない。
誰もカゼの代わりは出来ない…。



確かに消えてしまったカゼの存在をキヨは実感した。





「…キヨ。人は思い出を美化してしまう。でも俺達は無口で無表情で、だけど正義感が強い自由気ままに生きていたカゼを覚えていよう。

カゼを思い出になんかしないで、いつまでも俺らは5人でいるんだって思っていよう?な?」




イノリは苦しそうに小さく嗚咽するキヨの頭を優しく撫でた。