「………はよ。とか言って…起きそうな顔で眠ってたね、カゼ」

「…あぁ。そうだな」

「…っ!!!!」



キヨは確かに消えてしまったカゼの存在を実感し、震える。


そんなキヨを優しく抱きしめるイノリ。




ケンは2人を複雑な気持ちで見ながら、カンナの嗚咽を聞いていた。




知らせを受け、カゼが眠る病室にやって来たカゼの両親に挨拶をしてから、悲しみが堪えきれない4人は無言のまま家へと帰宅した。



リビングにはカンナとキヨの啜り泣く声だけが響く。



「カゼ…」



誰かが無意識にカゼの名前を呟くと、カンナは奇声を発し、家から飛び出して行った。

唖然としたキヨ達。




そんなカンナの後をケンは追いかけた。




「カンナ!?カンナ、どこ!!」



ケンは辺りを見渡しながらカンナの姿を捜す。


今、カンナを1人にするのはマズい気がしてならなかった。




ケンが息を切らし脇腹を押さえながら走っていると、都内を流れる川の河川敷に着いた。



目を凝らすと、川の中に入って行こうとする金髪の後ろ姿が見えた。




「――!!!!カンナっ!」



ケンは川に飛び込むと、カンナの腕を引っ張った。




「カンナっ!!何してんだよっ!!」

「離してぇぇ!!私は死ぬの!!カゼのとこに行くのよ!!」



凄い力でケンに掴まれている腕を振るカンナは、目を見開いて叫んでいる。




「やっと…カゼの彼女になれたのに。やっと好きだって言ってもらえたのに……。どうしていなくなっちゃったのっ!カゼっ…!!カゼぇぇぇ!!私をっ…置いてかないでぇぇ!!!!!!」


「カンナ、そこにはカゼはいないよ」



川に向かって行こうとするカンナに、ケンは呟く。