祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】

「ところで私に何か話があったんじゃないの?わざわざバイト先まで来てくれたってことは」



キヨの問いにカゼは頷いた。




「………キヨは好きな人いる?」

「何よ、改まって。知ってるクセに」

「………イの付く人か。ずっと変わってないんだね」




キヨは口数が少ないけれど、だからこそ信頼出来るカゼには隠す必要はないと思い、素直に頷いた。





「………キヨとイノリは似合うよ。2人はお互いを誰よりも…理解してる」


「どうかな。イノリは私を女として見てないよ」


「………そんな事ない。きっとイノリもキヨの事……」




カゼが言い掛けるとキヨはカゼの腕を掴み、首を横に振った。


確信が持てないことを変に期待したくはなかった。





「私の事はいいよ。もう十何年も片思いしてるんだ、慣れちゃったよ。……それよりカゼは?何かあったの?」


「………キヨにだけは話す。1番信頼してるのキヨだから」




カゼはキヨを見つめると本音を話し始めた。