「………俺、イノリの事が好きなキヨが好き」


「じゃあ今の私は嫌いなの?」


「………ううん、好き。だってキヨは今もイノリの事を愛してるから」




下唇を噛み俯くキヨの頭をカゼは撫でる。





「………キヨ、大丈夫だ。今は無理でも、いつか必ずイノリは帰ってくるから」


「…私達は子ども過ぎたんだよね。好きな気持ちを隠して嘘をついて、いつだって相手の為だと言いながら自分ばかり守ってきた」


「………キヨはイノリの為に自分を犠牲にしてたよ。イノリもキヨの為に自分を犠牲にしてる」




カゼは足を開くと、キヨを見た。





「………はい、どうぞ」

「え?」




カゼは自分の足の間の地面をパンパンと叩く。




「………キヨはイノリの足の間に座るのが好きだっただろ。だからここにおいで」



キヨは苦笑いを浮かべるとカゼの足の間に座った。




風と共にカゼの香水の匂いが鼻を掠める。