「………無理なんかしなくていいんだよ。キヨはイノリを好きでいればいい」

「…なんで?なんでイノリの名前を出すの?」



キヨがカゼを睨むと、カゼは横目でキヨを見た。





「………キヨが辛そうだから」


「酷いよ!忘れようとしてたのに!!カゼは無神経過ぎるよっ!!」


「………俺はキヨとイノリに幸せになって欲しいだけだよ。ケンには悪いけどね」


「…何がしたいの?カゼはっ…私に何が言いたいのよ!!」




声を上げるキヨをカゼは睨む。


有無を言わせないカゼの目にキヨは怯むと、カゼから顔を反らし窓の外を見つめた。





道路の看板を見る限り、カゼが向かっているのは地元。




カゼの考えが分からないキヨだが、もう何も聞かない事にした。





「………着いたよ。降りて」




カゼが高速道路を乗り継いで来たのは、地元の土手。


既に空には星が輝いている。




「…カゼは…何を考えているの?私、カゼがわからないよ」

「………わからなくて正解だよ。俺は考えを口に出来ないから」




カゼが土手の草むらに座ると、キヨも並んで隣りに座った。