「………キヨ。俺とデートしよう」



再び4人で一緒に住み始め、ケンとキヨが付き合うようになったある日。


カゼがキヨの部屋にやって来た。




「デート?カゼどっか行きたいの?」

「………うん。だから行こう」

「カンナと行かなくていいの?」

「………カンナとは明日出掛けるから、今日はキヨと出掛ける」




カゼはキヨの手を引くと外に出て車に乗った。




カゼとカンナはキヨが家を出てから付き合い始め、今もとても幸せそうである。


キヨもケンと付き合い始めて幸せだったが、何かが満たされないでいた。





「どこ行くの?」

「………うん」

「うんって…。答えになってないけど」




キヨがカゼの顔を見てもカゼは微笑むだけで、何も教えてくれなかった。





「………キヨはもういいの?」

「え?何が?」

「………イの付く人」




カゼの言葉にキヨは顔をしかめた。




忘れようとしていた人

でも、忘れられない人




ケンと付き合って
カゼとカンナと一緒にいられて

幸せなはずのキヨが満たされない何かは



『イノリの存在』だった。