すると生ぬるい風が田んぼに吹き渡り、キヨの被っていた麦わら帽子が飛ばされてしまった。




「あーっ!!待って〜」




キヨは泥に足を取られながらも必死で帽子を追う。




「キヨっ!そっちは危ないわよ」



カンナが注意した瞬間、空に舞う帽子を見ていたキヨは急斜面に気付かず、そのままバランスを崩した。




「…っきゃああああ!!!!」



キヨの叫び声が一面に広がる。



落ちると思っていたキヨは、落ちた感覚がない事に気付くと閉じていた目を開けた。




「…ふぇっ?カゼ?」

「…………っ…。手、離しちゃダメっ…」




キヨが落ちる寸前、駆け寄り手を伸ばしたカゼがキヨの腕を掴んでいた。



泥だらけになった手が滑り、まだ小学生のカゼにはキヨを引き上げる力がない。




「…カゼも落ちちゃうよ!ここから落ちても、ちょっと痛いだけだから離していいよっ…」

「………ダメ。離さない」




カゼは歯を食いしばりながら、筋が伸びて痛み始める腕でキヨをしっかり掴み直した。



そんなカゼの元にイノリとケン、カンナが駆け寄り、列になってカゼを引っ張った。