物心つく頃。

気付けば癖っ毛で少しつり目の男の子がいつも隣にいた。



その男の子がそばにいる事に、違和感を感じた事はない。



いつも手を繋いで、公園や山、土手や河原に連れて行ってくれた

口は悪いけど笑顔の優しい男の子。




私はどこにいても
いつも彼の背中を捜してた。



彼の姿を見失わなければ、何も迷わずに生きていけると思っていたから…




私は幼心に彼に惹かれているのだと感じた。



その男の子がイノリ。





「イノリ〜!」




そう気付いてからずっと、
私はイノリの名前ばかり呼んでいた。


それはもう
バカのひとつ覚えみたいに。




名前を呼べばイノリは笑ってくれる。

それが嬉しかった。





カンナ、ケン、カゼの3人とは違う気持ち。


5人で過ごす毎日の中で、私はずっとイノリが好きだったんだろう。







夏休みなどの長期休暇も毎日5人で遊んでいた。



「キヨ、遊び行くぞ」

「わーい!イノリ、今日はどこに行くの?」

「ケンが河原で魚掴みしたいんだってよ」

「えーっ。田んぼで泥んこ投げしたいよ」



キヨは嫌々と首を振る。