「…ケン、私の中にもうイノリはいない。今、私が見ているのは…ケンだけだよ」




見つめ合う2人の間に風が吹き抜ける。


お酒と鼓動で熱くなる体には心地よい風。





「キヨ、それって…俺の彼女になってくれるって事?…もうキヨに触れてもいいの?好きだって毎日言ってもいいの?」


「うん。ずっと…待っててくれてありがとう」




キヨがニッコリ笑うとケンは両手を広げてキヨに駆け寄り、キヨを抱き上げた。





「わわっ!ちょっとやだっ…恥ずかしいよ!!」


「嬉し過ぎてヤバい俺♪わーっ!生きててよかったぁ!!生まれてきてよかったぁ〜」


「大袈裟だなぁ、ケンは。酔っ払いがそんな回ったら吐くよ!?」




ケンはキヨを抱き上げたままクルクル回ると、案の定吐き気を感じ、キヨを降ろした。





「ほら、言わんこっちゃない」



キヨはケンの背中をさすりながら、気になっていた事を問い掛けた。




「ねぇケン。そういえばあの歌の曲名って何なの?」

「…え?」



ケンは赤くなりながらキヨの手を掴むと、恥ずかしそうに呟いた。




「…作詞作曲Kento Kawatori。曲名は…『MITSUKI』」




吐き気が少し治まったケンとキヨは、大分前を歩いているカンナとカゼの後ろを歩く。




カンナとカゼが後ろを振り向くとそこには、赤くなりながら手を繋ぐ2人がいた。




夜が明けつつある空で薄く輝く星たちに見守られた4人。




これから新しい日常が始まる。


……はずだった。