祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】

酒が進むと共に話が弾んでいく5人。



暫くして、泥酔するケンと、ライブから飲み続けていた為吐き気をもよおしたカゼを外に連れて行くカンナ。




2人きりになったキヨとイノリは無言のまま酒を飲んでいた。




「…綺麗になったな、キヨ。ちょっと見ない間に随分と」

「失礼ね!元からだもん」

「ふっ…そうか。毎日一緒にいたから気付かなかった。……近くにいると見えなかったものも、離れると見えるもんなんだな」




イノリは微笑みながらグラスに口をつけた。




キヨも離れてみて気付いた事がある。



イノリはカゼには適わなくても、結構整った顔立ちをしていること。
左利きだということ。
癖っ毛だということ。



当たり前に近くにあったから、気にも留めなかった事に気が付いた。




もしかしたら距離があるのはいい事なのかもしれない。


大切さや愛しさに気付けなかったのは、存在が近すぎたからなのかもしれない。





そんな大切なことに気付くのが今になってしまった事に後悔するキヨ。