「もっしー!…うん。そうそう、そこの居酒屋。…わかった。待ってるよ」

「………誰か来る?」




電話を切ったケンにカゼが問うとケンはニッコリ笑う。




「イノリ。イノリが来るよ。俺が前もって呼んでおいた」

「えっ!!」




キヨとカンナは目を見開いてケンを見る。


カゼはふ〜んと納得すると、テーブルに並ぶつまみを黙々と摘んでいる。





「いやさ、俺らって言ったら5人でしょ?…もう過去の事は忘れてさ、また5人でやっていこうよ。いい大人なんだから」


「私はいいけど、キヨは大丈夫なの?」




カンナがキヨを見ると、キヨは複雑な表情をしたままコクンと頷いた。





「…きっと今会ってももう何も思わないよ。大丈夫。今の私はもう…」




キヨがケンを見ると、ケンは優しく微笑んだ。





きっと大丈夫…
何も思わない…

今好きなのはイノリじゃない。


だから動揺しない。
昔のように振る舞える。





キヨは早まる胸を撫でながら、そう自分に言い聞かせていた。