大盛況のライブもあっという間にラストを迎えた。




「えー…最後の曲になりました。この曲は俺が中学の頃、初めて作詞作曲した曲で、大切な人の恋心を綴った曲です。
あは。俺、カッコいい〜♪」




ふざけた口調で話すケンに観客は笑う。



会場を和ませた後、ケンは優しい目をしながらキヨを見つめた。




「パンクでもロックでもないですが聞いて下さい…」



ケンはギターを片手に歌い始めた。



それはとても優しいLove song。




キヨの耳に届いたケンの歌は、懐かしい気持ちを思い出させる。









人間に恋愛感情なんてなければ良かった


そんな気持ちさえなければ

毎日がただ楽しく過ぎていくのに


こんなに切ない思いや悲しい気持ちを感じて

涙を流すことなんかないのに




でも“好き”だという気持ちがあるから

幸せを感じることもあるよね



ありがとう

それを教えてくれたのは大好きな君で


君を好きになって

いっぱいいっぱい幸せになれたから


隣りにいるしか許されなくてもいい

愛してるって声が届かなくてもいい




でもいつか

この声を、言葉を

君に伝えられたらいいな




“…愛してる”



たった一言のこの言葉は


ずっとずっと

君だけの為にある言葉だから


伝えられる日まで

大切にしておくね









「…私、この歌聞いた事ある」




キヨはケンの優しい声を聞いて昔の事を思い出した。