「………キヨ、結婚しよう。もう子どもはいないけど俺はキヨを守りたい」




カゼがそう呟くと、キヨは首を横に振った。





「カゼはカンナを大切にしてあげて。それが私への罪滅ぼしだって言ったでしょ?…もう、何も迷わないでカゼはただカンナの事だけを考えててあげて」


「………でも俺は」


「カゼにはイノリと同じ想いをして欲しくない。だからいいよ。何も気にしなくていいから、あなたはあなたの幸せを掴んで」




キヨがそう言うと、カゼは涙を流しながらキヨを抱きしめた。





「………ごめんっ…ごめんな。俺は本当に…キヨと子どもを守りたかったよ。大切にしたかったよ…。この手で…抱きたかったんだよ」


「…ありがとう、カゼ。ごめんなさい…」




1人にしないでくれてありがとう。
優しくしてくれてありがとう。


一瞬でも愛そうとしてくれてありがとう…。




巻き込んでごめんなさい。
悩ませてごめんなさい。
悲しませてごめんなさい…。




カゼを愛して可愛い子どもを生んで、イノリの事なんか忘れて笑えたのなら、きっと幸せだった。



でもイノリ以外の人との未来は描けなかったの。





私が弱かっただけ。
私が、最低なだけなの。


だから、カゼは幸せになって。

あなたは何も悪くないのだから…






キヨが暫くして退院した後、キヨは母に、カゼはイノリに電話でキヨが妊娠していなかったと伝えた。



でもそれはもう意味のないこと。



キヨはそれから少し経った頃、ケンと共に家を出て行った。