キヨが月を見ながらそう思った瞬間。


下腹に物凄い痛みが走った。



「――っあ!!!!」




キヨは腹を押さえながら、その場にうずくまる。







何かが消える感覚。

痛い…
身体も心も裂けそうに痛いよ……




キヨはそこから意識を失った。










「………キヨ!!キヨっ!!」




キヨが意識を取り戻すと、目の前にはカゼの綺麗な顔があった。


キヨはぼんやりとその顔を見つめる。






「………大丈夫?どこか痛くない?」


「うん…。大丈夫。私…どうしたの?」


「………道端で倒れているのを見つけた人が救急車呼んでくれたんだよ。で、キヨの携帯の着信履歴にあった俺の番号に連絡してくれたんだ」


「そっか。…よかった、連絡したのがカゼの携帯で」




キヨは薄く微笑むと目を瞑った。


カゼはそんなキヨを見て、ぽつりと話し始めた。






「………キヨ。あのね、キヨは流産しちゃったんだ」

「…え?」

「………ここに運ばれた時は、もう既に死んじゃってたんだって。…きっとお腹の子は、キヨを守る為に命を張ったんだね」




カゼが悲しそうな表情をしながらキヨの頭を撫でると、キヨは涙を流した。





「お腹にいた子は、わかってくれたのかな?私の気持ちを…。私が産む事を望んでいないと知ったから死んじゃったんだね。

さすがカゼの子どもだね。お父さんに似て、正義感に溢れる優しい子だったんだね。

ごめんね、産んであげられなくて……本当にごめんなさい」




キヨはそう呟きながら、もう誰もいない腹を撫でた。






私はもう、妊娠する資格はない。


…でも、それでいい。



私は一生授かる事のないイノリとの子どもしか望めないから、妊娠なんかしなくていい。