「されたんだな!?何された!!」

「…イノリには関係ない!彼氏でもないのに彼氏ぶらないで!!」




キヨが怒りをあらわにしながら近付いてくるイノリを押すと、イノリはその腕を掴んだ。





「お前が他の男に触られて黙っていられるとでも思ってんのか!?」


「意味がわからないよ!私を捨てたのはイノリだよ!?なのに…なんで今更そんな事言うのよ…」


「知るか。嫌なもんは嫌なんだよ!」




イノリは胸にキヨを引き寄せる。





もう傷つきたくなんかないのに
イノリの事なんて忘れたいのに

キヨはイノリから離れられなかった。





「お前に触っていい男は俺だけだ」


「…酷いよ。なんでいつもイノリに気持ちが戻ると突き放すのに、私が忘れようとすると引き戻すの?」


「俺だってわかんねぇんだよ。…お前が他の男と幸せになる事を望んでるはずなのに、他の男に触られるのが嫌で仕方ない」




イノリは切なそうにキヨを見つめると、優しくキスを落とした。


…甘くて苦いキス。






「俺は本当はお前を、どこかに閉じ込めて俺だけのそばに置いておきたいんだよ。でも、そんな事出来ないし、そんな考えをする俺は気持ち悪いだろ」


「…ううん。そうして欲しい。……そうしてよ。私、イノリなら何されてもいい。だからそばにいてよ…私から逃げないで」




キヨはイノリの背中に腕を回し、イノリの体を強く抱きしめた。