キヨは静かになった家で1人、ベッドに寝そべりながら思いに耽っていた。




「…ケンは優し過ぎる。逆に辛いよ」



ケンは包み込むような優しさを持っている。


イノリしか見てなかったから気付かなかったけど、ケンは誰よりも男らしくて誠実だ。

そんな事に今気付いた。





イノリの事を忘れて、もっともっと視野を広げれば、1人でも新しい道を歩いて行ける。



キヨがそう思っていると、インターホンが鳴った。





「…ケン、もう帰ってきたのかな?」



キヨは髪を手ぐしで整えると、急いで玄関に向かった。





「ケン、早かったね。もうカンナ達送ってきたの?」

「ケンじゃねぇよ」




キヨがドアを開けると、そこにはイノリが立っていた。


反射的にキヨがドアを閉めようとすると、イノリはそれを足で止める。





「何の用よ。お姉ちゃんに誤解されるよ!?」


「華月とはそんな関係じゃねぇって言ってんだろ!……それよりお前、昨日カゼに何もされなかったか?」


「――…ッ!!」




キヨは悲しそうに眉を寄せると俯いた。



明らかに動揺しているキヨを見てイノリは悟った。