次の日、心地良い体温にキヨが目を覚ますとケンに抱きしめられていた。



体の関係を求める事もなく、キヨの気持ちを最優先するケン。


キヨは優し過ぎる彼の気持ちに答えてあげたくなった。





「…ん。おはよ、キヨ。ちゃんと眠れた?」

「うん、ケンがいてくれたから安心して眠れたよ」




キヨがニッコリ笑うと、ケンは顔を赤く染めながら微笑んだ。





「本当にもう大学行かないの?」


「うん。3年も通って今更辞めるのも可笑しいんだけどね。でも、もうイノリに会いたくないし…出来ればカゼとカンナとも顔を合わせたくないの」


「どうして?イノリはわかるけどカゼとカンナはなんで?」




キヨはイノリと姉のこと、そしてカゼとの出来事を話した。


自ら望んで過ちを犯した事を…。





「そっか。キヨ…辛かったんだね。気付かなくてごめん」


「何でケンが謝るのよ。…私は口先は綺麗事を並べてるけど、本当は最低最悪で心底汚い人間なんだよ。……ケンもこんな私なんか見捨てていいよ」


「見捨てないよ。キヨはただ、イノリを好き過ぎるだけだよ。だから俺がキヨを責めるなんて出来ないんだよ」




それに、自分のことを汚いなんて言うなと続けたケンは、わしゃわしゃとキヨの髪を撫でるとベッドから降りてリビングに向かった。





「カゼ、カンナ。キヨ具合悪いみたいだからさ、後で連れて行くから先に送っていくよ」


「え?キヨ大丈夫なの?風邪でも引いたのかしら」


「ん〜ん。ちょっと頭が痛いだけみたいだから、もう少し休ませてあげれば大丈夫だよ」




ケンはスウェット姿のまま車のキイを取るとキヨに声をかけ、カゼとカンナと共に大学へ向かった。