「………カンナ、濡れるよ」


「カゼ…好きだよ。大好き…。お願い、私を好きになって。カゼが抱えてる痛みを私にも分けて欲しい」


「………ありがとう、カンナ」




カゼは濡れてしまったカンナの体を抱きしめる。




「…キヨ、行こっか」

「うん」




庭で抱きしめ合っている2人を見たケンとキヨは、優しく微笑みながら静かに家から出て行った。





暫くして、抱きしめていたカンナの体をカゼはそっと離す。



「………カンナ。俺、美咲さんの…義姉さんの所へ行くよ」


「え?…なんで!?」


「………寂しいって言ってたから」


「私もカゼがいないのは寂しい!20年一緒にいたのよ!?今更カゼがいなくなるなんて嫌だ!!」




カンナは泣きながらカゼの服を引っ張った。


カゼが風のように消えてしまわないように。



無色の風は、吹き抜けてしまったら見えなくなってしまうから……