コンコン。…応接室のドアをノックする音。

「・・・誰だ?」

陽介の父、誠治が静かに問いかける。


「春子です」

「…入りなさい」

陽介の母、春子は、お茶セットを持って中に入った。

そして、テーブルの上に、お茶菓子とお茶をセットした。


「陽介は帰ったぞ」

「えぇ、今そこですれ違いましたから・・・あなた、お茶でもいかが?」

「…一杯貰うよ」

ソファーに掛けた誠治は、お茶を一杯飲んだ。


「陽介の奴、親の言う事など、全く聞く耳を持たない」

そう言って誠治はぼやいた。



「…あなたにはわからないでしょうね、陽介の気持ちは」

そう言った春子も、一杯お茶を飲む。


「…どういう意味だ?」

誠治は眉間にしわを寄せる。


「あなたは、ただの一度も、私を愛してなどくれなかった。

当然ですよね、恋愛結婚じゃありませんもの」


「何が言いたい」