「愛生!ボールいったよ!」
「えっ、うそぶほへぁッ!?」
「出た!乙桐の顔面パス!」
「ちょっと愛生、大丈夫!?」


私はすばしっこそうな小柄体系に反して、専らスポーツ全般を苦手としていたので、中学生当時演劇部と文芸部と美術部(別名オタク部と言われていた)を気まぐれで行き来しては、ひたすら妄想に精を出すことで充実した毎日を過ごしていた。
同時に片想いが楽しくて仕方ないと実感していたのもこの時期で、だからこそ妄想のなかの王子様と繰り広げるロマンスで自己満足している部分はあった。

それでもやっぱり私は手で触れることができる、生身の相手に巡り合いたかったのだ。
だって、大好きな人の温もりを感じてみたいじゃない?
お姫様が王子様に触れたいと思うのは当たり前のことでしょう?


「あーあ、私の運命の王子様はいつになったら現れるのかなぁ」


そんなこんなの、なんやかんやで更に月日は流れ、現在高校二年生の真っ最中。
痛々しさは少しずつ抜けてきたものの、未だに運命の王子様の存在を待ち望んでいる私こと乙桐愛生(おとぎりめい)は、今日も今日とて濃厚な妄想に励む日々を送っているのであった。



【さよなら御伽話(メルヘン)またきて現実(リアル)】