向こう側にいる少年を見据えて訊ねるも、彼は手作りの剣で一生懸命戦っている。
雰囲気からしてミツルではない気がする。
他の親戚に年の近い男の子はいないし。
まさか昔は愛加が男の子みたいな格好をしてたとか?

部屋のドア側にいる私と、窓側にいる少年との距離を感じて、小さい頃はこの部屋がこんなに広く感じたんだなぁと思った。


「女の子はみんな、この世に生まれた時から誰かのお姫様なんだ。だから愛生の前にも、いつか必ず素敵な王子様が現れるよ」


相変わらず顔には白いモヤがかかっている少年が、こちらに駆けてくるなりそのセリフを口にする。
前回は少年に王子様なんて現れるものかと馬鹿にされたけど、今回は何事もなく世界が暗転した。


「――愛生!いい加減置きなさい!早く起こしてって言ったのはアンタでしょ!?」
「へあっ!?」


意識が現実に戻された直後、計ったようなタイミングで起こしに来たお母さんの声に飛び起きる。
そういえば今日はベルに餌をあげるため、早起きするって意気込んでたんだ。

なんか夢を見ているせいか脳が休まってないというか、かなり寝足りない気もするけど、ベルのためにも起きないとね。
私は大きなあくびをしながらベッドから降りた。