商店街と言えば私が和泉川先輩と初めてデートした場所である。
アイス屋の看板が見えた時、あの頃の記憶が鮮明に蘇ってきて、針を刺されたかのように心臓が痛んだ。

……あはは、なんか笑えてきちゃうよね。
あの時は浮かれてて、まさかこんなことになるとは思ってもいなかったや。
この数ヶ月でこうも状況が変わってしまうなんて、人生ってわからないものだ。

アイス屋を素通りしてとぼとぼと歩みを進めていると、後ろから私を追い越した自転車が前方で急停止した。
私は目を丸くする。
キィーっと甲高いブレーキの音と共にこちらを振り返ったのは、元バスケ部主将の大樹先輩だったからだ。


「乙桐じゃないか」
「ど、どうも」


こんなところでバッタリ会って、しかも声を掛けられるとは予想してなかったから、私は戸惑いつつもペコリと会釈してみせた。