「愛生、シャーペンの芯くれ」


六時間目の授業中。
やたらの滑舌の悪い英語教師の説明を聞き流していると、隣の席のミツルからそんなことを言われ、結局あのシャープペンを回収してきていないことを思い出した。
そりゃアレを無視して探し物できるほどのスルースキルを、私は持ち合わせていないのだから仕方ない。

放課後探しに行こうか考えたけど、なんだかあの光景を目の当たりにした理科室に向かうのは、非常に不愉快な気分にさせられる気がしてならない。
しかもあのシャープペンは、今私をこんな思いにさせている張本人である和泉川先輩から貰ったものだから尚更。
……もういいや、諦めよう。


「……はい」
「あれ、今日は“一本百円”とか言わないんだ?」
「いいから早く取ってよ」


私はミツルにシャープペンの芯を手渡しながら、憂鬱な気持ちが増すのを感じた。